カメラが見た腰の角度、人は見えていたか
走り終えた後、自分では「いつも通り」のフォームで走れたと思っていた。けれど、AIが解析した映像を見ると、着地の瞬間、腰が数センチ落ちている。疲労とともに、意識の外で身体は少しずつ崩れていく。人の目では捉えきれない微細な変化を、カメラとアルゴリズムは静かに記録している。
フォーム分析AIは、トレーニングやレースの映像から関節の角度、重心の移動、左右のバランスを数値化し、可視化する。コーチが横に立っていなくても、スマートフォン一台で自分の動きを客観的に見つめ直すことができる時代。HYROXのように複数種目を連続でこなす競技では、疲労が蓄積するほどフォームが乱れやすく、怪我のリスクも高まる。AIはそのわずかな乱れを、感覚ではなく数字で教えてくれる。

数値が示すのは、改善点か、それとも限界か
ただし、AIが示すデータはあくまで「現在地」でしかない。膝の角度が何度ずれているか、ストライドが何cm短くなっているかを知ったとしても、それをどう修正するかは自分次第。数値を見て焦るのではなく、それを次の一歩へのヒントとして受け取れるかどうか。技術は問いを投げかけるが、答えを出すのはいつも自分自身だ。
カメラが映した自分の姿は、鏡とは違う。そこには、意識の外で動いている身体の真実がある。AIが変えるのはコーチングの形ではなく、自分と向き合う距離なのかもしれない。